
Smile Robotics 小倉 崇様 (Founders Program の卒業後)
June 21, 2021
Smile Robotics は飲食店向けの自動配膳・下膳ロボットを開発しているスタートアップです。
今回のインタビューでは、FoundX 卒業後の近況や FoundX での経験の活かされ方などお伺いできればと思います。
最近はいかがですか?
小倉: 元気にやってます!
Smile Robotics
https://www.smilerobotics.com/
まずは事業について教えてください
― FoundX 卒業から1年半経ちますね。その後の事業の展開や、最近のチームの様子など教えてください。
小倉:
そんなには変わってないですけど、いろいろ難しいなと悩まされているところはありますね。
まずはコロナの飲食業界への影響です。コロナは我々にとってチャンスでもありピンチでもあり、といったところでした。
コロナ禍で非接触ロボットのニーズが高まったという意味ではすごくチャンス。
なんだけれども、ただでさえ未来に投資してくれる飲食店って少ないのに、コロナの影響でもっと減っちゃったんですよね。そういう意味ではピンチでもあります。
― 未来に投資、とは?
小倉: 未来、つまり実用化以前の研究開発レベルの事業への投資ですね。
我々のロボットは研究開発段階ですぐに現場で使えるとは限りません。他方で今すぐ使える配膳ロボットがコロナ禍で一気に普及しました。
言ってしまうと、我々の入るスキがほとんどなくなっちゃったんですよね。
ただ、長期的にみれば社会のロボットへの抵抗感がなくなって我々にとってもいいんじゃないかな、とも思っています。
― そもそもロボットのビジネスをどう作っていくか、という話ですね。
小倉: それがすごく難しい課題なんですよね。
今までサービスロボットという分野では掃除ロボットぐらいしか正直成功している事例はないんじゃないかと思っています。
成功するサービスロボットの探求はずっとしています。最近は、これまでの下膳・配膳とちょっと違うロボットを試していて、アプリケーション先の PCR 検査の現場だとか色々探索的なことをやっています。
ホテルの現場では、うちのロボットが実際にホテルのお客さんが使った食器を片づけることができました。
ロボットビジネスにおいて、難しい課題が多い中でもちょっとずつ進めてはいるのかなと思っています。
― ホテルときくと生身の人間によるサービスを重視していそうですが、ロボットを導入していただいたとは意外です。
小倉: 単に人手不足の解消のためだけでは、なかなかロボットの導入はしてもらえません。
人手不足プラスアルファの提供価値が必要です。
今回だと子供向けのホテルだっだという事情があり、子供だったらロボットを見て喜んでくれるんじゃないか、それでホテルの人手不足も解消されれば一石二鳥、となったわけです。
あとは、昨今の非接触へのニーズの高まりがあってロボットを導入できているという側面はあります。本当に採算がとれてペイするようなところは実は少ないかもしれません。
FoundX にいた頃はファミレスを中心に引き合いが多少なりともあったんですけど、コロナ以降まずはデリバリーやテイクアウトに対応するのが飲食業界としては超急務になるじゃないですか。
最近は大体落ち着いてきたんですけど、そっちがより重要な投資先になっちゃって、ロボットは後回しになっちゃったんですよね。
― ロボットに下膳・配膳をさせるには、店内での飲食が大前提ですもんね。
小倉: だから起業当時の仮説は結構崩れています。もう1年も経てばある程度は回復するとは思うんですけど、色々と考え直しながらトライしています。
どこの会社さんもそうだと思いますが、特にロボットはハードウェアがあるのですぐ切り替えるというのが難しくて。
ー そんな中でホテルなどの新しい現場を開拓できたのには、なにかきっかけがあったんでしょうか。
小倉: メディアに出ていたのをみかけて声をかけていただきました。
ロボットはメディアには取り上げていただきやすいので、そういう意味での営業は楽かもしれないです。
ーSmile ROBOTICS の Web サイトでも、メディアに多数掲載されているのが紹介されていますね
卒業後、チームに変化はありましたか?
― FoundX ではチームメンバーは4名以下という参加条件があります。卒業後にメンバーの増減はありましたか?
小倉: メンバーは卒業してから増えましたね。今フルタイムが6人、バイトが2人、業務委託が1人で、関係者9人ぐらいいるような感じですかね。複雑な事務処理は外注でお願いしてますね。
去年の9月頃にはビジネスサイドのひとが正式にジョインして、今後の方向性については熱く議論を続けています。
FoundX 卒業後には会社を実際に運営するうえでの検討事項が増えましたね。採用、メンバーのマネジメントの重要性が増したのは卒業後の変化を感じるところです。
卒業後に FoundX でのご経験やネットワークが役立ったシーンはありましたか?
― FoundXが提供するのは、資金ではなく起業家コミュニティやサポーターネットワークです。こういったものは、卒業後も役に立っていますでしょうか。
小倉: Mantra の石渡さんとはいまでもいろいろ愚痴を言い合ったり、起業あるあるをシェアしたりしてます。数日前にも一緒にラーメンを食べにいきました。
FoundX に参加して石渡さんと友達になれたのが一番よかったことかもしれないです。
一番と言ったら FoundX に怒られそうですけど(笑)
FoundX 卒業後もアクセレーターや起業家コミュニティに参加しましたが、ここまで切磋琢磨できる仲間は他ではなかなか得にくいんじゃないですかね。
アクセラレーターのような、プレゼンをガンガンやって、会社紹介してくれたりといった支援機関と比べると、FoundX はかなり異色だと思います。全然違いすぎて比較対象にすらならないほどですけどね。
― いま他の場所で得られるものの話が出ましたが、逆に FoundX にあるものって何なんでしょう。
小倉: やっぱり同じフェーズの起業家と一緒に過ごす時間ですよね。僕の場合は隣に石渡さんや他の仲間たちがずっといてくれました。
そういうのって大人になると特に貴重というか、会社の同僚がいたとしても起業するときって孤独です。そんな孤独な状況を並走できる仲間が隣にいるというのは、他では得られないと本当に思いますね。
あとは卒業後にも FoundX のオンラインコミュニティで質問ができて、ほかのサポーターが教えてくれたりするのも活用しています。
― プログラムのアクティビティと違って、そこで出会った仲間は卒業しても消えないですからね。
小倉: ところで、コロナ下でもそういう FoundX の良さって生きてるんですか?
- 正直、試行錯誤しています…。定例のミーティングやグループワークはオンラインに切り替えています。そのおかげで遠隔地にいるメンバーも参加できるようになったという利点もありますよ。
小倉: ミーティングはオンラインで代替できますね。
ただ、パソコンがフリーズしちゃったよとか、作業がまったくおわらないぞとか、そういうのを気軽に言い合える距離感がよかったんですよね。
ーそうですよね。参加者のみなさんのプログラムへの期待を裏切らないために、オンラインでも起業家コミュニティの良さを感じられるような新しいアクティビティを FoundX では試し続けています。
それでは最後に、これから起業や FoundX への参加を検討されてる方にメッセージをお願いします!
小倉: これはいつも言っていることなのですが、いろんな人にいろんな意見をもらって、自分で考えることが重要ですね。
誰か一人の意見ではなく、多くの人の話を聞くのが特に初期にはすごく重要かなと思います。
せっかく僕もまだ本郷にいるので、また諸々落ち着いたら FoundX に遊びに行かせてください。
- はい、お待ちしています!小倉さん、ありがとうございました。
Smile Robotics について
Smile Robotics は、FoundX の Founders Program に 2019 年 4 月から 2019 年 12 月まで在籍しました。
Smile Robotics に関する情報はオフィシャルウェブサイトをご覧ください。
https://www.smilerobotics.com/
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