株式会社PROVIGATE 関水康伸様 (2007年博士卒)

October 11, 2019

現在の所属と肩書

株式会社PROVIGATE 代表取締役CEO

卒業(修了)した学部(研究科)・学科(専攻)・年

東京大学理学部生物学科(動物学)卒

東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修了、2007年博士課程修了(理学博士)

現在の事業について簡単に教えてください

家庭向けのIoT血糖モニタリングデバイスの開発をしています。”モチベーションの喚起”がキーワードです。

起業のアイデアに至るまでのエピソードを簡単に教えてください

PROVIGATEは、JSTのSTARTという事業(*1)の成果をもとに起業されました。この時の事業プロモーターはUTEC(担当は黒川さん)で、研究代表者は共同創業者でもある東大の坂田利弥准教授(*2)です。私はPROVIGATEの創業社長ですが、JSTのSTARTには直接は関わっていません。そういった文脈では、起業のアイデアを私が出したわけではないとも言えます。

とはいえ、起業時には、坂田先生の技術をもとに大きく風呂敷を広げておりますし、その風呂敷に従って今やピヴォットを果たしていますので、起業のアイデアを私が出したということもできます。

*1 https://www.jst.go.jp/start/

*2 http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/biofet/index.html

起業後、現在の主力アイデアに至るまでの変遷やピボットのエピソードがあれば簡単に教えてください

2015年3月の創業時、PROVIGATEは涙糖センサの実用化を目指していました。しかし、血糖測定は競争が激しい市場であるため、一本足打法では心もとない。むしろ坂田先生の技術は多項目で活きると睨んでいたため、実は創業直後からPROVIGATEでは「涙糖以外」のバイオマーカーの探索を水面下で行っていました。その中で特に注目したのは、コードネーム “α” というバイオマーカーです。

とはいえ、PROVIGATEは既にVCから資金調達を受けていたため、勝手なことはできません。 “α” の開発についてはもちろんVC出席の役会で共有しています。一般的にVCは「ベンチャーは一つのパイプラインにリソースを集中するべき」と考えますので、涙糖だけでなく “α” の開発を並行することにはあまり良い顔をされませんでした。しかし、運よく “α” の開発に使えるNEDOの助成金を得ることができ、研究開発を行うことが出来ました。

結果は驚くべきものでした。 “α” はIoT技術と組み合わせることで真価を発揮する画期的なバイオマーカーであり、血糖モニタリングのあり方を大きく変えるポテンシャルすらあることが徐々に明らかとなりました。

この成果を受け、PROVIGATEで創業2年9か月の2017年12月には「涙糖」から「α」にピヴォットすることを正式に意思決定をしました。

IT企業と異なり、リアルテックのモノづくり企業にとってこういった大きなピヴォットは普通「死」を意味します。PROVIGATEが最高のエンジニアと事業を継続できたのは、支え続けてくださったVCやエンジェル投資家の皆様、何よりも臨床現場から励まし続けて頂いた先生がたのおかげです。まだ道半ばですが!

共同創業者とどのように出会い、なぜ共同創業をすることになったのかを教えてください

坂田先生がJST-STARTで涙糖センサの開発をしているとき、私は香港のPEで働いていました。ある日UTECと私の共通の知人から香港にいた私に連絡が入り、「涙を使ったグルコースセンサのベンチャー起業にアドバイスを欲しい」と言われたのです。

というのも、私は前職のCDIで、診断薬や医療機器のプロジェクトを複数経験していたこともあり、ある程度の知識や人脈がありました。私は血糖モニタリングの世界はレッドオーシャンであること、診断薬事業は薬と違って市場がとても小さいことなどをよく知っていたため「筋悪案件です。しかも涙。悪いこと言わないのでやめたほうがイイです。」と起業を止めて差し上げようと思い、日本に一時帰国した際に坂田先生とお会いすることになりました。

ところが、実際に坂田先生にお会いしてみると、この技術が本当に素晴らしい。坂田先生の技術は「涙糖」の狭い技術ではなく「バイオセンサ」として汎用的なポテンシャルを持つ素晴らしい技術だったのです。これは面白い!とうっかり飲み会で意気投合してしまった私は、2014年の12月には務めていたPEを退職・帰国し、2015年3月に起業に至りました。

起業前や起業後で参考になった/今も参考にしている書籍・情報源・記事などがあれば教えてください

将来の東大卒業生起業家に向けて、応援のメッセージをお願いします

私が東大の学生だった20年前、起業をした5年前に比べても、現在の起業環境はけた違いに良くなっています。資金環境という意味だけではなく、情報という意味でも、日増しに改善されていると思います。

ただ、振り返ってみると、自分が起業・経営をする中で、何度も瀕死の危機に直面しつつどうにかこうにか乗り切り、強くなってこれたのは、メンターたる先輩経営者や起業家仲間の助言・励ましがあったからこそです。

起業したばかり・起業を考えている皆さんは、是非よいメンターや同志を社外に作っていってください。悩む前に秒で相談したほうが良い結果が出ると思います。(もちろんその前にさんざんファクトを集め試行錯誤し寝ても覚めても熟慮するのですが)

私もまだまだ道半ばですので、一緒に未来を切り開く仲間が増えることは大歓迎です!産学連携に聞けばコンタクトが得られると思いますので、いつでも訪問ください。ともに未来を創っていきましょう!!

プロフィール

東大 ⇒ 東大院理 ⇒ CDI ⇒ PE ⇒ PROVIGATE 趣味:育児/アウトドア/野菜作り/多読(最近全然できていない。。。)


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