アクティブ・コネクター株式会社 松本麻美様 (2009年修士卒)
現在の所属と肩書
アクティブ・コネクター株式会社 CEO/Founder
卒業(修了)した学部(研究科)・学科(専攻)・年
教育学研究科 比較教育社会学コース 修士 2009年3月
現在の事業について簡単に教えてください
Go Beyond Diversityというミッションで、イノベーションで世界を変えたいと思う日本のベンチャー企業と、自分の技術で世界を驚かせたいと思う外国籍エンジニアをつなげることで、グローバルでクリエイティブなチームを作るサポートを提供しています。
具体的には、ベンチャー企業に特化したグローバル人材(外国籍エンジニア)の採用支援と、その後のチーム作りの支援を展開しています。
起業のアイデアに至るまでのエピソードを簡単に教えてください
JICAでパキスタン事業を担当していた時に、数千億円の大がかりなパキスタンでのインフラプロジェクトなのにも関わらず、プロジェクトの企画そのものを考えるチームメンバーの中にパキスタン人のメンバーがいないことに違和感を感じていました。自分自身が、JICAの前職のNGOで働いているときに、パキスタンでの事業を成功させられた理由は、現地の人と日本のチームで力を合わせたからだ、という原体験があったため、企画は日本人、実行だけ現地の人、というJICAの(私の担当していた)プロジェクトの在り方に違和感を感じました。
新しい価値を世の中に生み出しいくのであれば、多様な人がチームにいることが大切なのではないかという思いがあり、悶々としている中で、「日本で活躍したい外国人留学生のうち、4人に1人しか日本で働けない。4人のうち3人はみんな残念にも母国に帰っていく」という記事を見た時に、なぜか涙が止まらなくなり「これだ!」という思いに駆られました。
それまでは起業ということも、留学生、人事、採用への関心も全くなかったのですが、突然とりつかれたように「このために何かをしなければ!」という思いを抑えきれず、色々と調査を始めました。外国人留学生の友人が当時はいなかったため、留学生の友人が多い高校時代の後輩に連絡をとってつなげてもらったり、知り合い経由で人事を担当している人へのヒアリングを繰り返して行きました。私が今行っているのは、いわゆる「人材紹介」といわれるビジネスがメインになるのですが、そういった業界があるということも知らなかったので、私のアイデアに一番近そうだと感じた、結婚相談所・お見合いビジネスに片っ端から問い合わせて資料を請求し、その結婚相談所ビジネスのモデルを研究しました。
起業ということ自体がよくわからなかったので、知り合いで学生時代から経営をしている友人にビジネスアイデアのプレゼンを持って、相談に行ったりもしました。
起業後、現在の主力アイデアに至るまでの変遷やピボットのエピソードがあれば簡単に教えてください
起業した当初は「外国人留学生を救いたい!」という思いが根本にあり、しばらく外国人留学生にフォーカスしたコミュニティ作りやサービス展開をしていました。しかし起業した2013年はグローバル人材採用への熱がなく、「それは非営利活動ですか?」「採用してあげてもいいけど、お金は払いたくない」といった悲しい現実に直面しました。当初思い描いていた事業計画通りに成長しないどころか、資金が尽きてもうだめだ、というところまで行きそうになる中で、とりあえず企業からのニーズがある外国人の方へのインタビューや、調査、コンサルティング事業などを請け負ったりしながら、一体どこに向かえばいいのだろう、と暗中模索状態でした。
色々と不安な状況で色々と手を出しすぎて収集がつかなくなっている中で、果敢にも正社員入社してくれた一人の営業メンバーは、私にはない「数字への執着」と「とにかく集中」ということができる人でした。そのメンバーと一緒に、とにかく一点突破を目指そうと、少しずつニーズを感じ始めた外国籍の中途エンジニアというところを中心に、人材紹介事業に集中することになり、少しずつ軌道に乗り始めました。
その後も、企業のタイプや、エンジニアのタイプなどは色々と仮説検証を繰り返しながら、一番マーケットフィットするところを見つけて行き、今に至ります。自分たちの努力だけでなく、こういう試行錯誤を繰り返す中で、外国人採用、働き方改革、ダイバーシティー、労働力不足などの単語が当たり前のようにニュースから聞かれる時代になるなど、時代の変化の後押しもあると思います。
共同創業者とどのように出会い、なぜ共同創業をすることになったのかを教えてください
共同創業者は実はすでに辞めてしまっていますが、共同創業者がいなければここまで来れなかったので彼との出会い、一緒に最初を作ってきたことに非常に感謝しています。
共同創業者とはもともと大学時代に、一緒にNGOのプロジェクトに関わったことがありました。ただその後は、特に連絡をとったり頻繁に会うわけでもなく、友人でもなく知人でした。
自分がやりたいことが、いわゆる起業と言われるものなのだ、と分かって、会社経営をしていた大学時代からの友人に連絡をとったところ、偶然にも同じタイミングで共同創業者もその会社経営をしていた友人に起業に関心がある、と連絡をとっていました。友人が共同創業者との最初のミーティングをアレンジしてくれました。その時点では共同創業者は「アイデアをねりあげるのを手伝うよ!」というだけでした。「事業計画の作り方」みたいな本を買って、共同創業者と毎晩1チャプターずつ、その本に書いてある内容を一緒に作り込む、という作業を数ヶ月かけて取り組みました。その後最終的に共同創業者の方が先に「これならきっと起業できるよ!自分も資本金を出す!」と言ってくれました。あまり自信がなかった私が起業できたのも、最初の資金を用意できたのも、共同創業者がいなかったら、ありえなかったことだと思っています。
その後残念ながら私の能力不足から、共同創業者とうまく行かず、最終的に彼が去っていく決断をしました。今でもその時の能力不足は改善していないということを日々感じていて、色々な挑戦に直面しています。
起業前や起業後で参考になった/今も参考にしている書籍・情報源・記事などがあれば教えてください
- ベンチャーキャピタルの人や、ベンチャー支援を展開している監査法人の方にビジネスプランを聞いてもらう
- 先輩経営者に相談すること
- 経営の考え方では、Zappos、スターバックス、パタゴニアの経営哲学に影響を受けて色々と学びました
- 商工会議所がアレンジしてくれる無料の経営相談
- 自分と同じビジネス領域ですでに社員として働いた経験が長い人に内部情報を聞くこと
- ビザスクを使って、色々と関係者にヒアリングをすること
- 東京大学の卒業生室の方の紹介で色々な関係者、先輩経営者の方にもお会いしました
将来の東大卒業生起業家に向けて、応援のメッセージをお願いします
起業をすることの辛さでもあり素晴らしさは、どんな状況に直面しても人のせいにできず、自分の欠点や成長できるポイントに向き合わざるをえないことかと思います。事業が思い通りに行くか行かないかとか以前に、起業をして経験していくこと全てが、自分の人間的成長のために最高に効率的な、アクセラレーション修行道場みたいな感じです。頑固で人や環境のせいにして自分を正当化しがちな私にとって、起業というタフな道以外は自分が変わっていく(成長していく)手段がなかったのではないかな、と思います。
その意味では、起業をすれば、リスクに勝るゲインは必ずあると思います。
プロフィール
17歳で単身渡英でUnited World Collegeに入学。ウェールズの寄宿舎での2年間の生活、カナダMcGill Universityでの大学生活を経て、日本に帰国し東京大学大学院に入学。大学院在学中は、ユニセフのガーナ事務所でインターンシップを経験。卒業後ゴールドマンサックスに入社。311を機に退職をし、パキスタンに渡りNGOのパイスタンプロジェクトの立ち上げと運営を担当。パキスタンに惚れ込み、JICAのパキスタン事業に関わる。その後情熱に突き動かされるままに2013年に起業。今は会社経営と子育てがライフワーク。Twitter@a_connector Facebook asami.matsumoto