株式会社テンクー 西村邦裕様 (2006年博士卒)

October 16, 2019

現在の所属と肩書

株式会社テンクー 代表取締役社長

卒業(修了)した学部(研究科)・学科(専攻)・年

2001年 東京大学 工学 部機械情報工学科 卒

2003年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 修了

2006年 東京大学 大学院工学系研究科 先端学際工学専攻 修了、博士(工学)

現在の事業について簡単に教えてください

情報技術で医療に貢献するべく、社会実装を手がけています。

具体的には、がんのゲノム医療における情報サービスの提供をしています。がんゲノム医療のためのトータルソリューションソフトウェアChrovis ( https://chrov.is ) を開発し、そのソフトウェアの提供、サービスの提供を行っています。

具体的には、がんのゲノム医療における情報解析・臨床的意義付け・レポート作成を行っています。臨床的意義付けには、世界中の医学・生物学の知識や薬剤、治験の情報を入れた知識データベースを用いて行います。レポートは、専門の医師向けのレポートと、患者向けのレポートの2種類を作成し、がんゲノム医療におけるがん遺伝子パネル検査の結果をわかりやすく伝えることを行っています。

起業のアイデアに至るまでのエピソードを簡単に教えてください

大学の助教をやっているときには研究やその他のことが忙しすぎ、起業後のことをゆっくり考える余裕はありませんでした。本来は、教員として在籍中にPOCなどが回せると良かったのかも知れませんが、クロスアポイント制度なども無かったため、教員・研究者を辞職して起業後に考えることになりました。また、起業直後は研究でやり残していた研究関連の論文読み、論文書きなど、本来、研究者としてやるべきことを、時間ができたためにやっていた感じでした。その後、受託システム開発を始めつつ、サービス開発をしていったという経緯になります。

起業後、現在の主力アイデアに至るまでの変遷やピボットのエピソードがあれば簡単に教えてください

私の研究が、バーチャルリアリティ(VR)とゲノムという一見、離れている分野を融合する新分野でした。多量の情報のあるゲノムデータを解析し、それをわかりやすくインタラクティブに可視化する、その際にVR技術を援用することを行っていました。

起業直後はプロジェクションマッピングやAR技術の話もあったのですが、計画停電や節電の影響であまり伸びず、でした。その中で2012年5月に東京スカイツリーがオープンしました。このスカイツリーのオープンに合わせて、スカイツリーの展望台(高さ350m)からの、リアルタイムの360度画像を提供するサービス「Skytree View ソラマド」を企画・開発・運営し、乃村工藝社と一緒に1年間限定でリリースいたしました。12台の一眼レフで撮影される画像をパノラマ化して、パソコン、タブレット、スマートフォンに配信し、どこでもどの時間帯の画像も見れるようにするサービスです。隅田川の花火やゲリラ豪雨、雪の日、晴れた日の富士山など見られ、面白いサービスにはなりました。

その後、私のもともと研究していたゲノム情報解析、バイオインフォマティクスから、ゲノム医療につながると考え、2012年末から、現在の商品であるChrovisの開発を始めました。その頃、ゲノム医療は、ほぼ注目もされておらず、でしたが、信じて4年ほど開発をし、2016年から東京大学のゲノム医療研究に協力をはじめ、2017年2月からがんゲノム医療の臨床研究、2018年8月から先進医療Bの解析・判定を担当させていただくことになりました。その結果、おかげさまで、東京大学とともに、JST/NEDO主催の大学発ベンチャー表彰2019「文部科学大臣賞」( https://www.jst.go.jp/aas/index.html )をいただくことができました。

共同創業者とどのように出会い、なぜ共同創業をすることになったのかを教えてください

共同創業者の青木とは大学の研究室が同じでした。私が起業したいと思っていた際に1人での起業は良くないと思っていたところ、青木と話している時に起業の話になり、一緒に起業することになりました。創業の際にデザイナーがいた方が良いと思い、デザイナーの坂田を入れて、3人で創業することになりました。

私が大学で助教をしており、退職が年度末が良い、ということになり、2011年2月末に退職届の提出、3月31日退職、2011年4月1日にテンクーの創業となりました。2011年3月11日に地震が起こり、計画停電、節電などあり、電気を必ず使う情報系には向かい風の中のスタートとなりました。

起業前や起業後で参考になった/今も参考にしている書籍・情報源・記事などがあれば教えてください

将来の東大卒業生起業家に向けて、応援のメッセージをお願いします

学生の頃、ネットバブルがあり、ベンチャーに対して浮き沈みもあるのを横目に見て来ました。テンクーを創業した2011年よりも、起業についての支援環境も考え方も情報も増えてきており、知るべき情報も手に入るようになってきていると思っています。そのため、自分自身の行動の制御権を持っている方 (Locus of Controlが内側にある方)には挑戦しやすくなってきていると思います。また、起業すると「川を渡る」と言うと聞いたこともありますが、川を渡った先輩方や仲間にいろいろ教えて頂いたり、刺激になったりしています。同窓の仲間で、川を渡った人同士のつながりもありますし、ある種の一体感はある感じはしています。のりではなくて、本当に挑戦する方は、みんなWelcomeだと思います。がんばってください。

プロフィール

  • 桐朋→東大工学部→東大院・情報理工(修士)→東大院・工(博士)・アントレ道場1期生→東大先端研・ポスドク→東大情報理工・助教→テンクー創業 https://xcoo.co.jp
  • 学部・修士・博士とも東京大学運動会陸上運動部

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