ストックマーク 株式会社 林達様 (2011年学士卒)

現在の所属と肩書

ストックマーク 株式会社 代表取締役 CEO

卒業(修了)した学部(研究科)・学科(専攻)・年

2011年 文学部宗教学科 卒業

現在の事業について簡単に教えてください

企業が抱える課題のーつに「意思決定」があります。第四次産業革命における「意思決定」には、より高度な質と速度が求められます。Stockmarkは、最先端の自然言語処理技術を用いた3つのSaaS、最先端の自然言語処理の研究をベースに、組織で使うニュース及びナレッジ共有プラットフォーム「Anews」、大量のテキストデータから経営の戦略的意思決定を強力にサポートする「Astrategy」、社内外のテキストデータや営業日報・商談メモを解析し、営業戦略を支援するサービス「Asales」を提供しています。
現在、これらのサービスは、経済産業省様、帝人様、コンチネンタル・ジャパン様、セブン銀行様、リクルートホールディングス様、、三菱商事様、博報堂様、JTB様、サントリー様など、1500社以上にご導入いただいております。

起業のアイデアに至るまでのエピソードを簡単に教えてください

小学校時代、台湾に住み海外にもたくさん連れて行ってもらっていたことから、幼い頃から異文化交流の機会が多くありました。その中で何事にもまずはチャレンジする精神が身についた気がします。 東京大学在学中に、北京大学へ留学したときのこと。世界の学生たちは「東アジアのために私たちができることはなにか」と、真剣に考えていたんです。彼らの意識の高さには大いに感化されました。 帰国後、東京大学・北京大学・ソウル大学の学生を集めた国際交流サークルを立ち上げ、インバウンドサービスを提供する会社を設立しました。
ビジョンを描いてみんなを一つの方向性にまとめることが得意で、それを自分自身が楽しみながらできていました。チームの先頭に立ち、みんなで大きな目標に向かっていく。それ以上に面白いことはないと思いました。
そして、「自分のためにだけ生きるのではなく、これからは人のためになることをやっていく必要がある」と考えるようになっていたんです。
そして、もともとほとんどサラリーマン的な人がいない家系だったので、そこから起業に至るのは自然な流れでした。
学生起業も比較的順調だったのですが、どうしても目線が低くなりがちでした。そこで新卒では商社に就職しました。ビジネスの全体像を見渡せるようになるためです。実際に人やお金の動き、意思決定のポイントなど、ビジネスの軸となる部分を学べました。
退職後、2016年にCTOの有馬 幸介とストックマークを創業しました。

起業後、現在の主力アイデアに至るまでの変遷やピボットのエピソードがあれば簡単に教えてください

Anews開発のきっかけは、大手企業からの一通のメールでした。
最初、私たちの事業はTo C向けのサービスを想定していました。なかでも私たちが課題感を感じていたのが情報収集の非効率さでした。「世の中にはいろんな情報があるし、受け取るのは簡単だけどうまく使えていないよね」と。そこで自分が保存した情報から、読むべき情報をレコメンドしてくれるアプリをつくりました。
それが社名の由来にもなっている『ストックマーク 』というアプリです。当時はちょうど、スマートニュースやグノシーが流行りだしていたころでした。
アプリはそこそこダウンロードはされたのですが、正直、サービスとしてどう成長させていけるかはあまり考えられていなくて(笑)。当時は、休んでいても仕方がないので、手を動かしていたって感じでした。
やはりTo B向けサービスの方が、ビジネスパーソンとして働いていた経験も活かせるし、僕らのバックグラウンド的にいいのでは? と考え始めたときに、運命のメールが来ました。
グローバルの自動車部品メーカーの広報部長から、「あなたたちのサービスを見ました」と。
「自動運転などの先端テクノロジーに関する情報を、社員が効率的に得られるサービスを自社でつくりたい。手伝ってくれないか?」という内容でした。
当時はオープンイノベーションが今ほど流行していなかったので、大企業とベンチャーが組む事例はまだ多くはありませんでした。
これはチャンスだと思って、メールを受け取って2日で提案書をつくり、早速会いに行きました。ちなみに当時、僕らはスーツも来ていなかったですし、名刺すらつくっていなかったので、「名刺ないの!」とお客さんに驚かれましたね(笑)。サービスは無事リリースできたのでよかったです。
そのとき、「これは他の企業にもニーズがあるかもしれない」と思って開発したのが、AIの力でユーザーの目的に合わせてビジネスニュースを届けるサービス「Anews」です。 その後はオープンイノベーションの流れで『Anews』の受注が決まりはじめました。

共同創業者とどのように出会い、なぜ共同創業をすることになったのかを教えてください

大学時代に代表をしていた国際交流サークルで、有馬が同じプロジェクトに参加してくれたのがきっかけです。
当時、私たちが参加していた国際交流サークルでの活動は、東アジアのトップ大学の学生を招いて、東アジアの課題について真剣にディスカッションする、能力面や体力面、そしてマインド面でのタフさが要求される場でした。
今でこそ単に効率が悪いだけと思えますが、準備の最終段階では、1週間の睡眠時間が10時間以下なんてこともありました。サークルの運営は結構大変で......ディスカッションのテーマやフィールドワークを準備するために、アジア各国の学生たちと深夜まで話し合うこともありました。
そんな環境下でも、諦めず、前向きに一緒にやってこれたことがお互いの信頼につながっています。
性格的にも今も役割分担みたいなところがあり、僕がビジョンを描いて、有馬がそれを論理的に詰めていくという感じです。
その後、有馬はサークルで1年間活動したあと、2010年に卒業して日鉄ソリューションズに入社、私はサークルの運営後、学生起業を経験し、伊藤忠商事に入社しました。
社会人になってからも、よく飲みに行きつつ、ビジネスプランを考えたり起業について話し合ったりしていました。水道橋のスパ・ラクーアのサウナで議論もしました(笑)
起業熱が高まってきた2014年ごろからは、週末に”ビジネスアイデア100本ノック”を行いました。「どんなビジネスができるだろう?」を考えて、とにかく数を出し合う。今やっている事業とは全然つながりのないアイデアもありました。

起業前や起業後で参考になった/今も参考にしている書籍・情報源・記事などがあれば教えてください

  • エクセレント・カンパニー(トム・ピーターズ/ロバート・ウォーターマン)
  • ぼくは勉強ができない(山田 詠美)
  • ツァラトゥストラかく語りき(フリードリヒ・W. ニーチェ)

将来の東大卒業生起業家に向けて、応援のメッセージをお願いします

起業する理由は皆さん様々かと思いますが、ビジネスは本来楽しいものであるはずです。
刺激的であり、仲間がいるからです。今の先が読めない時代に、あらゆるステークホルダーが幸せになることを考えるために、想像力を働かせ、本質を見極め、そして「楽しくを追求」して欲しいと思います。
そのために大切なことは、ビジョン、変化を恐れないメンタリティ、愛嬌の3つを持つことです。ビジョンに関しては、1つ1つの物事に対して自分なりの答えを出すことが大切です。変化を恐れないメンタリティでいえば、我々の生活はかなりroutine化されて規範に乗っ取られていると思うので、その殻を破ってボーダーを超えていくことです。そして3つ目の愛嬌が一番大事です。これはコミュニケーション力であり、対人間力を意味します。
今日本は、資本主義の価値観の踊り場にいると言ってもいいかもしれません。お金儲け主義を貫きたいわけでもできるわけでもなくなっている社会の今のフェーズに新しい価値観が求められていると思います。是非これから起業する皆さんは、社会の新しい価値観を見据えて、是非仲間と楽しく事業を拓いていってください。

プロフィール

東京大学文学部宗教学科卒業。伊藤忠商事にて投資戦略策定及び事業投資、事業会社管理業務に従事。台湾出身で貿易業を営む両親の下に生まれ、幼少期を台湾、日本の往復で過ごす。学生時代には、東京大学・北京大学・ソウル大学の学生交流ネットワークにて、300名規模のフォーラムを主催。その後、東アジアの富裕層向けインバウンドサービスを提供するスタートアップを設立、大手旅行代理店との提携、行政との共同事業を成功させる。2016年、ストックマークをスタートさせ、AI✕テキストマイニングを強みとするSaaSであるAnews、Astrategy、Asalesを開発・運営中。AIによって日本企業のビジネス・プロセスを再定義し、グローバルでの競争力を高めるべく奔走中。