株式会社Basset 竹井悠人様 (2013年修士卒)

現在の所属と肩書

株式会社Basset 代表取締役

卒業(修了)した学部(研究科)・学科(専攻)・年

理学部情報科学科 2011/3 卒業、情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 2013/9 修士修了、アントレプレナー道場 9 期生。

現在の事業について簡単に教えてください

株式会社Bassetは、仮想通貨が信頼して使えるような世の中になるように、仮想通貨取引所をはじめとする金融機関に代わって、取引安全を見守るサービスを提供しています。具体的には Bitcoin をはじめとする仮想通貨を用いたマネー ロンダリングやテロ資金供与といった犯罪への対策を推進するため、金融機関におけるコンプライアンス担当者の業務を支援し、調査業務などの負担軽減を図る Web サービスの提供、研修やコンサルティングを実施しています。
私たちの事業は、非常に強くデータ分析に立脚しており、特にブロックチェーンというデータベースに書かれた仮想通貨のすべての取引を、Basset 社内のシステムでリアルタイムにチェックし、AI を用いて不審な取引があれば自動的に検出する KYT (Know Your Transaction) というプロセスを開発しています。更に、不審な取引が見つかった場合には、金融機関が保持している顧客情報と、その顧客のデジタル アイデンティティ、すなわち、SNS などのオンライン上の人々の身分とを推定して突き合わせて、担当者がさらなる調査を行うことを支援します。

起業のアイデアに至るまでのエピソードを簡単に教えてください

前職の株式会社 bitFlyer に入社した頃は、20 名ほどの小さなスタートアップでした。その時点では Bitcoin の価格は 5 万円前後でしたが、その後の急激な社会ブームによって一時期 200 万円までのバブルが起こるのを目の当たりにしました。その頃には従業員も 200 近くとなり、仮想通貨取引所が立派な金融機関としての立ち位置になったのを感じました。そしてバブルが弾けた直後の 2018 年には、同業他社を狙った 500 億円相当のサイバー攻撃事件を目の当たりにし、セキュリティやコンプライアンスといった取引所の安全面に関するニーズを非常に強く肌で感じるようになっていました。2019 年初頭からは、自身の個人的な興味のトピックとして、Bitcoin 取引の安全をデータ分析の観点から支援することができるのではないかと考えるようになりました。海外にはそれらを行う企業がすでに存在していましたが、日本を始めとするアジアにはまだないことに気付き、今の時機を逃してはいけないと強く感じるようになったことから、再びスタートアップ業界に戻ることを決意しました。

起業後、現在の主力アイデアに至るまでの変遷やピボットのエピソードがあれば簡単に教えてください

ピボットのエピソードではないですが、毎日、各メンバで作業進捗を共有して、週に 1 度は KPT (Keep, Problems, Try) を行いながらチーム レビューをしています。また、顧客が求めているものを模索するため、迅速に仮説検証ができるよう頻繁にマイルストーンの見直しをし、また 2 週間単位のスプリントでのタスクの優先順位の調整を行うようにしています。

共同創業者とどのように出会い、なぜ共同創業をすることになったのかを教えてください

共同創業者たちとは前職の同僚でした。私含めて 4 人みなスタートアップ マインドを持っており、新しい挑戦をすることが大好きなメンバです。みな取引所の現場を見てきて、仮想通貨のもつブロックチェーンという技術的な観点での革新性を感じ、そして金融システムに新たな風を吹かせるという社会からの期待感を肌で感じて来ました。また、前職が小さなスタートアップだった頃からの同僚だったので、互いの仕事の仕方をよく理解しており、みな心地よい距離感でチーム ビルディングできるという自覚がありました。そして、それぞれが各分野での高度な職能を持ったメンバであり、たとえば私はブロックチェーン開発部長、他のメンバもUX部長、経理部長、海外展開プロジェクトマネージャを務めてきました。
このようにエンジニアリング、プロダクト デザイン、グロースハック、バックオフィスというマルチ タレント揃った仲間で、しかも暗号資産の現場でコンプライアンスの必要性を肌で感じたメンバによるチームなので、スタートアップではこれ以上ないくらいラッキーな共同創業チームに恵まれたのではないかと思っています。

起業前や起業後で参考になった/今も参考にしている書籍・情報源・記事などがあれば教えてください

リーン・スタートアップ https://www.amazon.co.jp/dp/4822248976
スタートアップ全般の情報収集のため
自身の業界の情報収集のため

将来の東大卒業生起業家に向けて、応援のメッセージをお願いします

夢を大きく描いて、チャレンジを恐れないことです。これに尽きると思います。たとえば、私はスタートアップ起業に関わるのはもう 4 度目になります。毎度、大きなビジョンを持ってそれぞれに取り組んできましたが、それらが決して上手くできてきたわけではありません。しかし過去、楽しいこともあれば、辛いこともありつつ、すべてが有意義な経験になってきたと思っています。そして毎回、スタートアップをやるための思考回路が少しずつ洗練されてきている気がします。
今の私たちは、仮想通貨の RegTech という非常に専門性の高い分野にいますが、ここから将来、仮想通貨が広く普及した世界をでの健全な経済発展を支える、という夢につなげていこうとしています。今後、さまざまな技術的・社会的な挑戦があることは間違いないでしょうが、そこに果敢に挑んでいきたいと思います。

プロフィール

東京大学卒業、東京大学大学院情報科学科コンピュータ科学専攻修了。アントレプレナー道場 9 期でのビジネス アイデア コンテストでは優勝。大学院修了後は、IPA (独立行政法人情報処理推進機構) の実施する2013年度未踏事業に「モバイル端末に特化した自動スケジューリングプラットフォーム」で採択される。その後、学部の後輩とともに最初のスタートアップ Emaki をはじめ、CTO として写真共有アプリなどの開発に携わる。その後、別のスタートアップに移り物流プラットフォームの開発を主導。2016年には国内最大手の暗号通貨取引所 bitFlyer への入社を決意。ソフトウェア エンジニアとして従事し、CISO (最高情報セキュリティ責任者) およびブロックチェーン開発部長を歴任した。2019年にスタートアップ業界に戻ることを決意し、2019年7月株式会社Bassetを創業。