Letter to Applicants

FoundX では東京大学関係の起業家たちが、アイデアを見つけ (find) 、見つけたアイデアから創業する (found) ステップを支援する、スタートアップのためのインセプションプログラムです。

このページは FoundX のプログラムに応募をする候補者や、スタッフとして働こうと考えている方々に向けた手紙です。このレターを通して、

  • 私たちがどのような点に着目して起業家の皆さんを採択するのか
  • 私たちがどのような姿勢で起業家の皆さんを支援していくのか

について簡単に解説することで、候補者の皆さんと私たちとのお互いのマッチングを事前に確かめられるようにしたいと思っています。

Δx

私たち FoundX では、どのような起業家やどのようなアイデアを求めているのでしょうか?

この質問はベンチャー投資の世界で良く耳にする質問にも置き換えられるでしょう。つまり、「Team? Product (Idea?) Market? 」、あるいは「Jockey(起業家)? Horse(プロダクト)? Market(市場)?」という質問です。

これら3つの要素はすべてが大事です。しかし「すべてが大事」というのは答えになっていません。だから一つの方針として私たちが見ている視点をお伝えしておきます。

私たちが最も見るものは「Δx」、差分です

特に「ΔProduct」、つまりプロダクトやアイデアの改良スピードや改善率を最重視して見たいと思っています。

プロダクトの改良スピードはチームの良さを表します。素晴らしいチームは僅かな期間の中でもプロダクトを劇的に改善させます。まだアイデアだけの状態でも、僅かな期間でアイデアの解像度を明瞭にし、仮説検証を行ってプロトタイプを作ります。

私たちはΔxを通して、チームとチームの学習スピードを見ます。成長の度合いと速さを見ます。良いチームでさえあれば、何度も繰り返し挑戦をする中でマーケットを見つけることもできると思っています。

アイデアも起業家としての能力も、どちらも徐々に形作られていくものです。最初から完全な人はいません。そして私たちも完璧な起業家を求めているわけではありません。だからこそ、私たちはその成長度――Δを重視して、起業家の皆さんのアイデアや資質を見ていくことができればと思っています。

私たちは2か月、3か月のタイミングで常にプログラム参加者を募集をしています。もし一度不採択になったとしても、その期間での改善率(Δx)を示していただければ、次回は採択されるかもしれません。だから仮に一度不採択になったとしても、タイミングが合えば継続的に応募いただきたいと思っています。

Idea & Product Sought by FoundX

FoundX のいくつかのプログラムでは、既にアイデアを持った起業家を募集しています。

起業家もそうであるように、アイデアもまた徐々に形作られていくものです。そのΔの方向性が、私たちの求める方向性と合致しているのであれば、私たちはそのチームを積極的に応援したいと思っています。

最も重要なのは人々が欲しがるものを作ること (Make something people want) です。しかしそれだけでは短期的なユーザーのニーズにフォーカスしてしまいます。

私たちのミッションはゆとりを作ることです。そこで方向性をある程度定めたうえでアイデアを募集したいと考えています。具体的には、以下の 3 つの条件を満たすものです。

  1. Make Something People Want を満たすもの
  2. ゆとり (scholē) を作ることにつながるもの
  3. 私たちの重点的なテーマに合致するもの

特に以下の項目のうち、2つ以上を満たすアイデアを優先的に採択しています。この条件を通して、私たちは将来的にすべての人たちにゆとりを生み出したいと思っています。詳細は私たちのミッションをご覧ください。

▶ Big problem

大きな社会的課題や将来的に大きくなる社会的課題、もしくは実現の難しい課題に取り組むアイデアを求めています。気候危機などの大きな課題でも、分解していけば解決可能なものになり、一つが解決すればその周辺領域も徐々に解決可能になるはずです。私たちはそのような大きなビジョンを持ちつつ、目の前の解決可能な課題に取り組むチームを支援します。

大きな課題の例

  • SDGs の Indicatorに資する取り組み
  • 被規制分野(規制があるということは、何らかの社会的影響があり、正しく解決すれば大きな影響を与えられる)
    • LTSE 等の FinTech 周りの取り組み
    • ヘルスケアや教育、農業に関する取り組み
    • 暗号やセキュリティ、生体認証など
  • 地域での社会的課題(かつ他地域への展開可能性があるもの)
  • 気候危機や環境、緑化など、グローバル規模の課題
  • 食糧や水資源、石油やエネルギー、鉱業など、普遍的な問題
  • 生命や寿命に関する課題
  • 複数のセクターにまたがる課題
  • 新たな文化を生み出す課題
  • 社会人教育に関する課題
  • コミュニティやソーシャルキャピタルに関する課題
  • 共助や社会保障など、かつては公的機関が担当していた諸課題
  • Y Combinator などが掲げる課題(e.g. Y Combinator からスタートアップへのリクエスト

▶ No.1 technology

将来的に、世界で一番のテクノロジとなりうる可能性を秘めるアイデアを高く評価します。また、各種テクノロジの開発支援ツール・サービスなども積極的に支援したいと考えています。

テクノロジの例

  • ソフトウェアの一部領域での独自性
  • ディープテックなどと呼ばれる領域の技術での独自性
  • 特定の産業領域(小売など)において、ソフトウェアに最適化した垂直統合を行う
  • 特定領域でのソフトウェア開発ツール

▶ Market Leader

将来的に世界の市場のリーダーとなる道筋が見えるような、そんなアイデアを求めています。リーダーになるつもりで挑まなければ世界のシェアの 20% 程度を採ることも覚束ないでしょう。独自の戦略のない、どこかにあるサービスのコピーはリーダーとなることが難しいため、採択の対象となりません。

リーダーの要素の例

以下のいずれか1つ以上を持っているアイデアがリーダーとなる兆しを持つと考えています。

  • 占有的な技術
  • ネットワーク効果
  • 規模の経済
  • ブランド
  • 複雑な組み合わせと調整
  • ディストリビューション
  • 規制
  • 今はまだ小さいけれど急激に成長している市場(年率20%など)

私たちが避けるアイデアについて

以下のようなアイデアは、スタートアップのアイデアであっても私たちの支援の対象とならない可能性が高いです。応募の前に今一度ご確認ください。

  • 労働者が不利な状況におかれるギグエコノミーを推進するアイデア
  • キュレーションメディア
  • 暗号資産を取り扱っているもの
  • 人材派遣業
  • クラウドファンディング

Entrepreneurs Sought by FoundX

FoundX では、起業家の現在のフェーズに合った複数のプログラムを提供し、これから起業家になるアントレプレナーたちを求めています。

私たちのアントレプレナーシップの定義は「自らのコントロール可能な範囲を越えて好機とリソースを追い求め、社会の課題を解決することにより新たな価値を創造して、それを維持可能な形で提供し続ける」というものです。この条件を満たしたうえで、FoundX では以下のような方々を主に支援していきたいと考えています。以下の項目が自分に当てはまるか自信がないという人もいるかもしれません。しかし皆さんが目指すΔの方向性が私たちと合致していれば、私たちはそれを評価したいと思っています。

▶ Pay it Forward - 恩送りをする

起業家同士がアドバイスをしあい、助け合い、時には知り合いを紹介しあうことなどを通して、恩送りをしてくことを期待しています。また将来の起業家に対しても可能な範囲で恩送りをする、そうした人たちの集まりにしたいと思っています。また、自分自身がヒーローになりたいという人ではなく、自分の周りの人やチーム、社会、集団としての成功を求めてい起業家を私たちは求めています。

▶ Focus and Intensity - 集中と強度を持つ

スタートアップにはフォーカスと強度が重要だと言われています。私たちは十分なフォーカスができている起業家を探しています。どのような領域でフォーカスと強度を持っている

Reason - 直観ではなく、思考の強度

感情や直観はもちろん大事なものです。しかしスタートアップは極めて反直観的であると言われるように、直観に従うだけでは失敗してしまうのがスタートアップです。私たちは、積み重ねられた思考の量と質によって辿り着いた結論は、直観を超えると信じています。自分の頭で考えて、思考の積み重ねによって辿り着いた、多くの人が賛成しない真実を持つ起業家を探しています。

Practice - 分析ではなく、実践の強度

私たちは思考を重視しますが、分析だけをしてほしいわけではありません。深く考えるためには分析だけではなく、実践を通した学びが必要です。私たちは実践を通して学ぶ起業家を求めています。起業家の能力は天性の才能ではありません。規律ある実践や練習によってうまくなると私たちは考えています。

▶ Be a Learning Animal - ラーニングアニマルになろう

「セールスアニマルになれ」というのは。物凄いスピードで成長(Δ)をしたいと考えている人。

Falsificationism - 自分の間違いを探し続けて正せること

私たちは完璧である起業家を求めてはいません。自分の間違いを「積極的に」探して、それを治そうとする起業家を求めています。「自分の考えが正しいと補強してくれるデータはどこにあるだろう?」(prove true)と自分の仮説の検証材料を探す verificationism ではなく、「自分の考えが間違っているとしたら、どこだろう?」(prove false)と常に問いかけるような起業家を探しています。起業家は必ず何度も間違います。だから数々の間違いから学べるような、経験への開放性を重視します。ここでの Falsification は哲学での使い方に準じます。

Experiential Learning - 経験学習

経験学習においては、単なる具体的な経験だけではなく、そこからの内省、概念化、実験を繰り返すことが大事だと言われています。このサイクルを迅速に行うような、そんな創業者を求めています。

What We Do

私たちは様々なプログラムで異なる支援を行います。具体的な支援内容は各プログラムのページをご確認ください。ここではどのような方針でプログラムを設計しているのかについて、主にそのアウトカムを述べます

Founders Program - FoCuS

Founders Program は既にアイデアがあるチームが、次の資金調達を行うまでの支援をします。並行して、ダメなアイデアを早期に振るい落とすため、アイデアに対して多くのプレッシャーをかけるような支援を行います。

✔ Focus 🎯

起業家の皆さんの貴重な時間を、やるべきこと(初期は製品開発と顧客と話すこと)だけに割ける環境を作り、フォーカスできる環境を提供します。また、起業家の皆さんがフォーカスをするためのマイルストーン設定やマイルストーン達成のために、摩擦(friction)を少なくする手助けをします。

✔ Customer Commitment 💰

私たちは候補顧客を単に紹介するだけではなく、彼らから強いコミットメントを引き出すお手伝いをします。カスタマーコミットメントとは、アクティブユーザー、LOI、売上などの強いコミットメントのことを指します。これらは次のフェーズに向かうために重要な要素です。またそうしたコミットメントを得られるまでのプロダクト作りを支援します。

✔ Safety Net 👨‍👨‍👧‍👧

私たちはピア起業家同士やサポーターをつなぎ、セーフティネットを作り上げます。セーフティネットを作ることで、起業家に大きな挑戦してもらうための安心感を提供します。

Pre-Founders Program - 3R

Pre-Founders Program では、アイデアを決めてから次のステップへ向かうまでの助走期間を支援します。

✔ Readiness

私たちはチーム作りやプロトタイプ作りを直接は手伝いませんが、あなたがそれらのことをやりやすいような環境を提供し、あなたの準備が整うまでの期間中の支援をします。

✔ Resolution

私たちは起業家の皆さんのビジネスの解像度を上げるお手伝いをします。具体的にはサポーターのネットワークを通した仮説検証や壁打ち、そしてアドバイスを得やすい環境づくりを手伝います。

✔ Resource

私たちは起業家やサポーターのネットワークなどの資源や、場所という資源を提供します。

Fellows Program - VIP

Fellows Program では主にアイデアの発見をお手伝いします。

✔ Vision

アイデアのビジョンを広げるお手伝いをします。優れたビジョンを作ることができれば、多くの人が仲間になってくれるはずです。

✔ Iteration

スタートアップのアイデアには秘密(他の誰も気付いておらず信じていない、自分だけが知っている真実)が必要です。しかし秘密を探すのは大変です。そのため仮説検証のイテレーションを素早く回せるようなインタビュー相手の紹介や技術検証のお手伝いをします。

✔ Peer

私たちは起業家同士のネットワークを提供し、起業家候補の方々がお互いから学べる環境を提供します。

What We Don’t

私たちは従来とは異なるやり方でスタートアップを支援します。そのため、以下のようなことは行いません。

  • Event: 私たちは定例を除き、イベントやミートアップを行いません。そうしたイベントは別組織の皆さんが行っているからです。そのため共同イベントなどについても基本的にお断りさせていただきます。代わりにオンラインでの記事更新 (FoundX Review など)を行います。
  • Mentoring Program: 私たちは外部の方を招いたメンタリングを行いません。代わりにピア起業家同士のピアメンタリングや、サポーターからのサポートオフィスアワーを行います。
  • Pitch: ピッチイベントはしません。代わりに VC ツアーを行います。
  • Seminar: 長時間の講義スタイルはしません。代わりにマイクロラーニングのためのコースを提供します。ただし資金調達の講義などには注力しません。代わりにコミュニケーションやチームに関する小さなワークショップを行います。
  • Technical Advice: 私たちは技術的なアドバイスを行いません。チームは既に技術の実装ができる前提で採択します。代わりに実装を楽にするための様々なツールの紹介を行います。
  • WIP: 私たちは多数の活動を行いません。逆に私たちはWIPの制限を行います。

How We Do

上記のようなことをどのようにしていくか、私たちの支援する方法について説明します。

Method

  1. Engineering: 支援の幅を広げ、様々な可能にしていくために、私たちはエンジニアリングを用います。エンジニアリングとは「工学とは数学と自然科学を基礎とし、ときには人文社会科学の知見を用いて、公共の安全、健康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問」であり、私たちは科学技術の知見だけではなく、人文社会科学の知見も実装して、スタートアップの皆さんを支援します。

  2. Enlightenment: 私たちはスタートアップに関する啓蒙活動を行っていきます。また私たちはリーディングとライティングの文化を大切にし、大量のインプットをしながら、その知識の外化を通して私たち自身の学びを発信していきます。そして研究を行うことで、知の蓄積に貢献します。

  3. Environment: 私たちは環境づくりを重視します。エコシステムや場所や人といった環境を通して、起業家の学びを促進し、起業家同士のつながりを作ります。いくつかの環境については、『成功する起業家は居場所を選ぶ』に書いています。

Our Values

  1. Be an Example - 私たち自身が起業家の模範となれるような行動を取り、それを通じて起業家の皆さんの学びを促します。そのため、私たちは常に「起業家ならどうするか」を自問自答し続ける必要があります。

  2. Experiment with Evidence - 私たちはエビデンスを活用しながら、効果的な支援ができるように改善していきます。エビデンスを用いるのは、支援の効果を上げるだけではありません。私たちの透明性を維持するためにも重要視したいと考えています。既存のエビデンスがない場合もあるかもしれません。そのときはそのことをドキュメントとして残し、今回の施策はどのような仮説で行い、どのような学びを得るのか、そしてその意思決定のプロセスはどういったものだったのかを残します。その積み重ねが私たちの支援のプロセスを長期的に優れたものにしてくれるはずです。私たちはエビデンスや仮説に基づいて常に実験を行い、改善していきます。ですので決まりきったやり方があるわけではありません。そのため私たちのやり方は常に不完全であり続けますが、それは私たちが挑戦し続けているということでもあります。

  3. Empower Associates - 私たちは仲間との共同作業を通して物事を成し遂げます。そのために仲間を常に助け、仲間をエンパワーします。

Why We Do

私たちは「イノベーションを可能にし広げることで、ゆとりを生み出し、よりひらかれた社会を作る」ことをミッションとして活動しています。そして優れたイノベーションとアソシエーションを次々と生んでいく仕組みを作ることが私たちが FoundX を行う理由です。

起業家の皆さんと一緒に、よりひらかれた社会を作っていけることを私たちは楽しみにしています。