Mantra

Mantra 石渡祥之佑様・日並遼太様・山中武様

February 21, 2020

現在の事業とチームについて簡単に教えて下さい。

Mantraは「世界の言葉でマンガを届ける」スタートアップです。
マンガの海外展開には、翻訳のコストが高い、翻訳から海外版出版までのスピードが遅い、翻訳版マンガを購入できるチャネルが少ない、といった問題があります。これらの問題により、現在多くのマンガがファンによって非公式に翻訳され、海賊版サイトで読まれています。私たちはマンガの自動翻訳技術と、それを活用した多言語マンガ配信サービスを提供することで、翻訳コスト、配信スピード、販路不足の問題を解決し、世界中のマンガファンが正規版マンガを楽しめるような環境を作ろうとしています。
Mantraのチームは技術者2名と編集者1名で構成されています。創業者の石渡と日並は創業直前までそれぞれ自然言語処理と画像認識の研究をしていた経験があり、編集者の山中にはマンガの編集やゲーム広告のディレクションの経験があります。

これまで多くの決断をされたと思いますが、最もよかった決断を教えてください。

一人ではなく、二人でスタートアップを始めたことです。「誰もやり方を知らない」問題に取り組むスタートアップでは、困難に面したり重圧がかかったりする場面も多いと思います。このような場面において、複数人のチームで問題に取り組むことによって、より良い解決策が浮かんだり、精神的な負荷を和らげたりできているように思います。また、共同創業者と話すことによって、自分が認識していない考え方のバイアスに気づくこともできるので、「知らず知らずのうちに変な方向に進んでいる」リスクは低減できるかもしれません。

これまでに犯した最大の過ちについて教えてください?

プロトタイプの開発に時間とコストをかけ過ぎたことです。もっとユーザの声を聴きながら作ることが出来ていれば、より速く、より安く、事業判断のための材料を集められたように思います。たとえば、オンラインで公開する事を前提に完成度の高いものを作るよりも、オフラインで知り合いに見せるためだけに完成度の低いものを作る方が圧倒的に低コストです。浮いた時間や予算でVer.2、Ver.3とプロトタイプの改良を重ねられると考えると、Ver.1を作るための時間はもっと短い方が良かったと思います。

創業者そしてCEOとして、あなたの会社の誇れる点を教えてください。

私たちは、Mantraの挑戦に大きな社会的インパクトがあることと、難しい技術的課題を解いていることに誇りを持っています。
「世界の言葉でマンガを届ける」、しかも海賊版ユーザに正規版を読んでもらうことは容易ではありません。しかし、Netflixが映画の海賊版を、Spotifyが音楽の海賊版を激減させた歴史を振り返れば、マンガの海賊版を減らすことは不可能では無いはずです。この挑戦の成功は、世界中のマンガ読者に即時的にマンガを届けることだけでなく、マンガの作り手に適切な利益を還元することにも繋がります。
マンガの完全自動翻訳もまた、容易に実現できるゴールではありません。手で描かれた特殊なフォントや、マンガ独特の話し言葉、ストーリーに含まれる複雑な文脈など、マンガには翻訳を難しくする要素がたくさん詰まっています。ですが、私たちはこの難しい技術的課題を解くことが楽しくて仕方ありません。小規模なチームですが、一見達成不可能に見えるゴールに向かって、一歩ずつ着実に研究開発を進めていることを誇りに思っています。

FoundXという場所で起業を行うことについて、どんな点が良いと思いますか?

いい点を挙げるとキリがありませんが、まず、ノンエクイティかつ大学発のプログラムなので、直接利害関係が無いメンターたちに事業内容や資金調達について相談できるのが良かったです。(Foundersプログラムでは)個室やバックオフィス支援が与えられるので、売上がまだ無いような状況でも、集中して事業に取り組めます。さらに、同時期にFoundXに所属していた他の起業家たちと、コーヒーを飲みながら進捗を共有したり悩みを相談しあったりすることができたのもとても楽しかったです。

日本では、安定した仕事に就くことは、は特に重要視されているように思います。起業家になることは、大きなリスクではありませんでしたか?

私たちは大学院修了と同時にFoundXに入ったので、いわゆる「新卒カード」を使うことなくスタートアップの世界に飛び込んでしまいました。この決断を下す際には少し恐れもありましたが、それよりも「今このビジネスに取り組まないと、世界中のライバルに先んじられてしまう」リスクの方がよほど大きく感じました。また、学生生活が長く、生活水準が上がっていなかったことと、情報系の専攻だったので「もし全て失敗しても、頑張って就活すれば仕事は見つかるだろう」と思えたことにも背中を押されたように思います。

最後に、FoundXにメッセージをお願いします!

FoundXには集中して事業に取り組むためのサポートが揃っています。創業者がやり甲斐を感じるような、かつスタートアップとして取り組むべき課題が見つかれば、あとはFoundXに応募して、粛々とトライするだけです。私たちの挑戦もまだ始まったばかりです。お互い頑張りましょう!

Mantraについて

Mantraは、FoundXのファウンダープログラムに選定され、2019年4月から12月まで在籍していました。Mantraに関する情報はオフィシャルウェブサイトをご覧ください。
 

Mantra 石渡 祥之佑様 (Founders Program の卒業後)

July 30, 2021
Mantra はマンガに特化した機械翻訳技術を駆使し、世界の言葉でマンガを届けるソリューションを提供しているスタートアップです。
今回のインタビューでは、FoundX 卒業後の近況や FoundX での経験の活かされ方などお伺いできればと思います。
石渡: 何でも聞いてください!

まずは事業について教えてください

― FoundX 卒業から 1 年半経ちます。チームや事業にはどんな変化がありましたか?
石渡: チームメンバーは増えました。
FoundX にいた時はフルタイムが 3 人だったのが、いまは 5 人になりました。
パートタイムのエンジニアも入れると13人です。
フルタイムのメンバーはビジネスサイドが増えて、パートタイムはみんなエンジニアです。
全員リモートなので一か所に集まって大家族という雰囲気はまだありませんが、それでもチームが大きくなったのは感じます。
― 事業はいかがでしょう?
石渡: 事業の変化としては、卒業後すぐにビジネスを法人向けに切り替え、「Mantra Engine」というサービスをローンチしました。これは出版社や漫画アプリの会社に向けた漫画の機械翻訳クラウドサービスです。
現在はまた別の新しい To C 向けのサービスをスタートしました。漫画で外国語を学習できる Langaku というサービスで、それの β テストをまさにやっているところです。
卒業のタイミングではレベニューゼロだったことを考えると、一番大きな違いは「ちゃんとお金を払ってくれるお客さんがいて売上が少しでもあること」と言えるかもしれないですね。

卒業後のビジネス・事業の成長と、起業家としての自分の成長を教えてください。

石渡: ビジネス面は先ほど話した通り、ちゃんとお客さんがいることですね。
もちろんまだまだ初期ではありますが、ひとつ成長した点といえるかなと。
僕自身は、ちょっとメンタルが強くなったと思います。
バチバチに脳のリソースを持っていかれるような交渉事が起きますよね。そういうのがあっても、一回目より二回目、二回目より三回目の方が楽だなと感じます。
だいたいこれくらいの時間やリソースでさばけるだろうみたいな慣れもありますね。
あとは、「いったん置いておく」ことができるようになりました。
以前は全然そういうことができなかったんです、懸念事項に脳を支配されてしまって。
いまは意識的に、いったん置いといて日曜は休もう、と考えられるようになってきました。別に日曜日悩んでも悩まなくても結果は変わらないじゃん、と。
― 事業の成長と共にストレスの量は増えますよね。
石渡: ストレスは量だけでなく種類も増えてきましたね。こんなことも考えないといけない、あんなことも考えなきゃと、と。
これからメンバーが増えるとメンバーのマネジメントも考えないといけないなって想像してます。困ったら Founders の同期だった小倉さんに相談しようと思います。いつも悩みがあれば小倉さんに相談しているので…
― 困ったときに誰かに相談できる環境は大切ですよね。チーム内でもそういった機会はあるんでしょうか?
石渡: ふたつきに一回、「不安解消デー」を設けています。
リモートワークのストレスや不安って、目に見えないところでじんわりメンタルを削っていく感じがあるじゃないですか。
毎日は会えないことでメンバー同士が疎遠になり不安がふくらんでいることを、自分も仲間も認識していたんですよね。
そこで、一日すべての予定をブロックして、全員が現在抱えている不安を共有して解決方法を議論する、という取組みを始めました。
丸一日、絶対それしかやらない日を作るんです。議論によって悩みの解決策が出ればよし。出なくても悩みの共有によって少し気が楽になる。この取り組みが結構効いてます。
― どんな不安があがってきますか?
石渡さん エンジニアリングリソースの最適な配分、多忙な時期が続いて精神的な疲労が溜まっている、お客さんに提案できるソリューションが見つからない…など、いろいろあります。
― 普段は気軽に相談しづらいことでも、そのための時間が用意されていることで共有のハードルが低くなっていそうですね。

卒業してからわかる FoundX の良さはありますか?

― FoundXが提供するのは、資金ではなく起業家コミュニティやサポーターネットワークです。こういったものは、卒業後も役に立っていますでしょうか。
石渡: けっこうありますね。
Founders 時代の同期とは悩みを共有できるチームメイトとして当然話すのですが、思いのほか Founders の時にはそんなに関わりなかったのに卒業後に話すようになったひとがいます。
たとえば、冒頭でメンバーが増えた話をしましたが、人を雇うとなったらまず相談しているのが以前僕がインタビューに協力してあげた FoundX サポーターの方なんですよね。
それまでは業務委託のエンジニアなどに知り合いを雇っていて、一般的な採用プロセスがまったくわからなかったんです。
そこでその方に相談したら、めちゃくちゃすごいスピードでいい人を大量に紹介してくださって。
それだけでなく、よいエンジニアの探し方や、面接のやり方、事前課題の設計などまるっと教えていただきました。
あとは Pre-Founders 卒業生の Paper Digest 高野さん。業界やグローバルなマーケットを見ているという点で僕たちと似ていて悩みを共有できるところもあるので、いろいろ教えてもらったりします。
― 特に印象に残っているエピソードはありますか?
石渡: 事業への影響が直接的だったのは、先述の Langaku に繋がるご縁を卒業後に紹介いただいたことですね。
Founders 時に、FoundX の紹介でお会いした方が、集英社の方のお知り合いでした。その時点では集英社さんに対してお役に立てる提案ができていませんでした。
でも後になって、そのとき繋いでいただいた集英社の方と再会する機会があり、それが Langaku プロジェクトに繋がりました。
新しい事業の種が、FoundX にいたときに生まれていたんです。
…といったご縁が色々あるので、FoundXでのネットワークが卒業後も役に立っています。
― 卒業後も FoundX のコミュニティを活用いただいているんですね!

FoundX でのアクティビティで、いまも役立っているものはありますか?

石渡: リズム作りですね。
FoundX でやっていた、毎週目標を定めて週次でそれをレビューするというのはいまでも全員が参加するミーティングでやっています。
あとはティータイムもよかったです。
- FoundX オフィスにいる全員が、時間を決めてみんなで休憩をとる取組みですね。※現在は休止しています
石渡: ティータイムは本当によかったなと思っていて。
コミュニティの濃度が薄くなっちゃうというのはどのコミュニティも感じている課題だと思います。
FoundX のティータイムを現在入居しているオフィスに紹介したら、「是非やってみましょう!」という話になってこっちでも始まりました。

それでは最後に、これから起業や FoundX への参加を検討されてる方にメッセージをお願いします!

石渡: 起業を検討している人へのメッセージは、「まずはFoundXに応募してみよう!」ですね。笑
大学在学時から FoundX 卒業後のいままで様々なプログラムや起業家コミュニティに参加していますが、FoundX ほど参加者同士がプログラム期間中だけじゃなくて卒業してからも助け合えるような仕組みができていて、かつこれほどにそういう気持ちが強い人が集まっている場所はそんなにないんじゃないかなという気がします。
FoundX に参加すると、FoundX Values の Pay it forward (恩送りをしよう)という価値観にめちゃくちゃ感化されるんです。
「恩送りをする」精神って世の中一般としては当たり前のことじゃないですよね。だけど僕らは何も知らない赤ちゃんのような状態から FoundX に参加して感化される。
FoundX はそんな価値観に共感できるひとが集まっているコミュニティだと思います。
- FoundX には 3 つの Values と 5 つの Way があり、プログラム内で振り返りの機会を頻繁に設けています。これらに共感するひとが集まっていることは、FoundX の特長のひとつと言えそうですね。

ところで、このインタビューをご覧のみなさんに石渡さんからお願いがあると伺っています。

石渡: Mantra ではマンガで英語を学習できるサービス「Langaku」のテストユーザーを募集しています。なかなか続けにくい英語学習を、マンガで楽しく続けられるサービスです。
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特に、現在英語を勉強している、もしくは英語の勉強に意欲的な方は楽しく使っていただけると思います。
- 新規事業に取り組み続ける Mantra さん、今後の成長も楽しみにしています!