Smile Robotics

 

スマイルロボティクス株式会社 小倉崇様

January 28, 2020

現在の事業とチームについて簡単に教えて下さい。

飲食店の人手不足を解消するために、配膳・下膳を行うロボットを開発しています。

起業に至るまでの道のりを教えてください。

東大の学生だった12年くらい前から起業には関心があったのですが、何をどのように進めていいのかわからず、具体的な行動には至っていませんでした。
2019年3月で前職のGoogleを離職することになり、それをきっかけに、ちょうどタイミング良くFoundXへ参加し、FoundXの支援を得る形で初めて本格的に起業準備を始めて、現在にいたります。

立ち上げた初期のころに直面した困難にはどんなものがありましたか?またどうやってそれらを乗り越えましたか?

実際に、我々のロボットを使ってくれる人を見つけるのが本当に大変でした。ロボットの完成品を見せることができないので、イメージ図を作り、見込み顧客のHPの問い合わせからメールを200通くらい送るなど、地道なアクションを1つ1つ続けました。
開発当初はカウンター内をレールで動く方式を考えていたのですが、顧客へのインタビュー結果から、カウンター方式の飲食店にはあまり受けないことがわかりました。こういうのって、顧客にヒアリングしないとわからないですよね。その後チームで相談して、急遽、移動方式のイメージ図を作って、それでまた1社1社にヒアリングしつつ顧客開拓をしました。顧客の声を聞いて改善して、また提案して、それをひたすら繰り返しました。
そして、徐々に我々のロボットに関心を持つ顧客が見つかり出し、並行して新聞にも掲載されたりして、使ってみたい!という企業と多く出会うことができました。

現在までにいろいろなことを学んだと思いますが、過去に戻ってやり直すことが出来るのならば、何をやり直したいですか?

結果論で言えば、新聞掲載、TV取材等受けて、顧客が十分見つかった状態になってから資金調達を開始した方が、もう少し楽に進められたかもしれない、とは思います。顧客と話すことを十分にせずに、メディア受けの良いデモビデオを作ってメディアの注目を集めることは、本質的ではないと思っていて、顧客と会ってとにかく話すことを優先していました。実は、ロボットの場合は、メディアの注目を引くことは意外と簡単なんですよね。
顧客が十分に見つかっていない中で資金調達を進め、多くの苦労も経験しました。ただ、その後、メディア露出が増えたことで、見込み顧客から問い合わせが増え、顧客も見つかったんです。今から思えば、順番が逆だったほうが苦労が少なかったかもしれないのですが、それらを事前に計画に組み込むのは難しいし、自己資金で続ける不安もストレスも大きかったので仕方ないとは思います。

創業者そしてCEOとして、あなたの会社の誇れる点を教えてください。

何もない状態から私を信じて一緒にがんばってくれている、同じ研究室の同窓生であり、前職の同僚でもある、椛澤光隆、小林一也という世界最高峰のロボット技術者こそが本当に誇れる存在だと思っています!

アーリーステージの創業者に対して、何かアドバイスはありますか?

人を頼りまくることがとっても重要なのですが、一方で、「この人の言うことを信じれば間違いない」と思考停止に陥らないことが重要だと思っています。すべてのスタートアップは世界に前例がないことをやっているので、誰かの過去の経験がそのまま当てはまるわけではないんです。人の言うことを参考に、自分の頭で考えて決断する。人を頼るが、依存しない、という姿勢が重要だと思います。

最後に、FoundXにメッセージをお願いします!

すぐ隣にほぼ同じ時期のFounder達がいて、いつでも相談や雑談出来るところが良かったです。特に同期のMantra、Columnaや、1期あとにFounders Programに入ったDapsからは、多くを貰いました。特にDapsのサービスに協力したことで、当社のHPがSNS等で共有されていき、それが直接的に取材や資金調達へとつながったんです。まさにFoundXの精神Pay it forwardを実感しました。
 

Smile Robotics 小倉 崇様 (Founders Program の卒業後)

June 21, 2021
Smile Robotics は飲食店向けの自動配膳・下膳ロボットを開発しているスタートアップです。
今回のインタビューでは、FoundX 卒業後の近況や FoundX での経験の活かされ方などお伺いできればと思います。
最近はいかがですか?
小倉: 元気にやってます!

まずは事業について教えてください

― FoundX 卒業から1年半経ちますね。その後の事業の展開や、最近のチームの様子など教えてください。
小倉: そんなには変わってないですけど、いろいろ難しいなと悩まされているところはありますね。
まずはコロナの飲食業界への影響です。コロナは我々にとってチャンスでもありピンチでもあり、といったところでした。
コロナ禍で非接触ロボットのニーズが高まったという意味ではすごくチャンス。
なんだけれども、ただでさえ未来に投資してくれる飲食店って少ないのに、コロナの影響でもっと減っちゃったんですよね。そういう意味ではピンチでもあります。
― 未来に投資、とは?
小倉: 未来、つまり実用化以前の研究開発レベルの事業への投資ですね。
我々のロボットは研究開発段階ですぐに現場で使えるとは限りません。他方で今すぐ使える配膳ロボットがコロナ禍で一気に普及しました。
言ってしまうと、我々の入るスキがほとんどなくなっちゃったんですよね。
ただ、長期的にみれば社会のロボットへの抵抗感がなくなって我々にとってもいいんじゃないかな、とも思っています。
― そもそもロボットのビジネスをどう作っていくか、という話ですね。
小倉: それがすごく難しい課題なんですよね。
今までサービスロボットという分野では掃除ロボットぐらいしか正直成功している事例はないんじゃないかと思っています。
成功するサービスロボットの探求はずっとしています。最近は、これまでの下膳・配膳とちょっと違うロボットを試していて、アプリケーション先の PCR 検査の現場だとか色々探索的なことをやっています。
ホテルの現場では、うちのロボットが実際にホテルのお客さんが使った食器を片づけることができました。
ロボットビジネスにおいて、難しい課題が多い中でもちょっとずつ進めてはいるのかなと思っています。
― ホテルときくと生身の人間によるサービスを重視していそうですが、ロボットを導入していただいたとは意外です。
小倉: 単に人手不足の解消のためだけでは、なかなかロボットの導入はしてもらえません。
人手不足プラスアルファの提供価値が必要です。
今回だと子供向けのホテルだっだという事情があり、子供だったらロボットを見て喜んでくれるんじゃないか、それでホテルの人手不足も解消されれば一石二鳥、となったわけです。
あとは、昨今の非接触へのニーズの高まりがあってロボットを導入できているという側面はあります。本当に採算がとれてペイするようなところは実は少ないかもしれません。
FoundX にいた頃はファミレスを中心に引き合いが多少なりともあったんですけど、コロナ以降まずはデリバリーやテイクアウトに対応するのが飲食業界としては超急務になるじゃないですか。
最近は大体落ち着いてきたんですけど、そっちがより重要な投資先になっちゃって、ロボットは後回しになっちゃったんですよね。
― ロボットに下膳・配膳をさせるには、店内での飲食が大前提ですもんね。
小倉: だから起業当時の仮説は結構崩れています。もう1年も経てばある程度は回復するとは思うんですけど、色々と考え直しながらトライしています。
どこの会社さんもそうだと思いますが、特にロボットはハードウェアがあるのですぐ切り替えるというのが難しくて。
ー そんな中でホテルなどの新しい現場を開拓できたのには、なにかきっかけがあったんでしょうか。
小倉: メディアに出ていたのをみかけて声をかけていただきました。
ロボットはメディアには取り上げていただきやすいので、そういう意味での営業は楽かもしれないです。
ーSmile ROBOTICS の Web サイトでも、メディアに多数掲載されているのが紹介されていますね

卒業後、チームに変化はありましたか?

― FoundX ではチームメンバーは4名以下という参加条件があります。卒業後にメンバーの増減はありましたか?
小倉: メンバーは卒業してから増えましたね。今フルタイムが6人、バイトが2人、業務委託が1人で、関係者9人ぐらいいるような感じですかね。複雑な事務処理は外注でお願いしてますね。
去年の9月頃にはビジネスサイドのひとが正式にジョインして、今後の方向性については熱く議論を続けています。
FoundX 卒業後には会社を実際に運営するうえでの検討事項が増えましたね。採用、メンバーのマネジメントの重要性が増したのは卒業後の変化を感じるところです。

卒業後に FoundX でのご経験やネットワークが役立ったシーンはありましたか?

― FoundXが提供するのは、資金ではなく起業家コミュニティやサポーターネットワークです。こういったものは、卒業後も役に立っていますでしょうか。
小倉: Mantra の石渡さんとはいまでもいろいろ愚痴を言い合ったり、起業あるあるをシェアしたりしてます。数日前にも一緒にラーメンを食べにいきました。
FoundX に参加して石渡さんと友達になれたのが一番よかったことかもしれないです。
一番と言ったら FoundX に怒られそうですけど(笑)
FoundX 卒業後もアクセレーターや起業家コミュニティに参加しましたが、ここまで切磋琢磨できる仲間は他ではなかなか得にくいんじゃないですかね。
アクセラレーターのような、プレゼンをガンガンやって、会社紹介してくれたりといった支援機関と比べると、FoundX はかなり異色だと思います。全然違いすぎて比較対象にすらならないほどですけどね。
― いま他の場所で得られるものの話が出ましたが、逆に FoundX にあるものって何なんでしょう。
小倉: やっぱり同じフェーズの起業家と一緒に過ごす時間ですよね。僕の場合は隣に石渡さんや他の仲間たちがずっといてくれました。
そういうのって大人になると特に貴重というか、会社の同僚がいたとしても起業するときって孤独です。そんな孤独な状況を並走できる仲間が隣にいるというのは、他では得られないと本当に思いますね。
あとは卒業後にも FoundX のオンラインコミュニティで質問ができて、ほかのサポーターが教えてくれたりするのも活用しています。
― プログラムのアクティビティと違って、そこで出会った仲間は卒業しても消えないですからね。
小倉: ところで、コロナ下でもそういう FoundX の良さって生きてるんですか?
- 正直、試行錯誤しています…。定例のミーティングやグループワークはオンラインに切り替えています。そのおかげで遠隔地にいるメンバーも参加できるようになったという利点もありますよ。
小倉: ミーティングはオンラインで代替できますね。
ただ、パソコンがフリーズしちゃったよとか、作業がまったくおわらないぞとか、そういうのを気軽に言い合える距離感がよかったんですよね。
ーそうですよね。参加者のみなさんのプログラムへの期待を裏切らないために、オンラインでも起業家コミュニティの良さを感じられるような新しいアクティビティを FoundX では試し続けています。

それでは最後に、これから起業や FoundX への参加を検討されてる方にメッセージをお願いします!

小倉: これはいつも言っていることなのですが、いろんな人にいろんな意見をもらって、自分で考えることが重要ですね。
誰か一人の意見ではなく、多くの人の話を聞くのが特に初期にはすごく重要かなと思います。
せっかく僕もまだ本郷にいるので、また諸々落ち着いたら FoundX に遊びに行かせてください。
- はい、お待ちしています!小倉さん、ありがとうございました。